名古屋高等裁判所 昭和26年(う)855号 判決
よつて原判決挙示の証拠によれば、起訴状記載の公訴事実の第一の業務上横領の点については、被告人が名古屋貨物株式会社一宮営業所のため、原判示(起訴状記載)の通り集金し、集金の都度右営業所の係員に引渡さねばならないのに、これを引渡さないで、自己に着服した事実が認められ、而して着服後、一宮市内の自宅等において、生活費に費消したことが明らかに認められる。横領罪は、自己に保管中の他人の物(又は公務所より保管を命ぜられた自己の物)を領得することで、いやしくも領得の意思を発現する行為が為されたとき、その行為の如何を問わず、横領罪が成立するのである。従つて他人の物を費消することによつて領得の意思を発現するのが、通常であるが、自己のために費消する目的で、着服する場合も横領罪が成立する。本件においては、被告人が自己の生活費等に費消する目的で着服した行為を横領と認定したもので、右認定に誤認はなく、右行為は横領罪の構成要件を充足しているので、原審判決に審理不尽はない。